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ナンパオトコは猛虎の夢を見るか?

尊大な羞恥心と臆病な自尊心。人喰い虎と成り果てた男の物語。果たして、人に戻れるのでしょうか。

言葉ひとつで「彼女」は変わる

「彼女」について、僕は語ることが出来ない。

なぜなら、「彼女」の事を知らないからだ。

「彼女」がいつ生まれ、どんな風に育ってきたか。

「彼女」の趣味は、好きな食べ物は、嬉しかったことは、悲しかったことは…

 

でも僕は、「彼女」と親しい人でも知らない、「彼女」の事を知っている。

正確には、「知らないだろう」事ではあるが。

 

 

その夜、僕はストリートに出ていた。

今晩、共に過ごしてくれる相手を探すために。

 

ストリートに出て、ほどなくし、大きな交差点に差し掛かった。

その大きさの割には、人通りは少なかったと記憶している。

 

その交差点を渡るとき、「彼女」とすれ違った。

 

ショートカットが良く似合っていて、男と見間違えるくらいに身長がある。

僕はすぐさま引き換えし、横断歩道を渡りきったところで、「彼女」に追いついた。

 

 

僕は少し距離を置きながら「寒いね」と言った。

なんにもひねりが無い、その場の状況を言っただけだ。

 

「彼女」は、こちらを向き「寒いですねー」と返してきた。

無視されなかった。

僕は、話を続けた。

 

「そのマフラー暖かそうだね!」

相手の持ち物をいじる。

 

「そうですね。とても暖かいです」

「彼女」はそれに答える。

 

 

そこから、並行トークを続けた。

 

「彼女」は飲み会帰りで、宿泊先のホテルに向かう途中だったようだ。

「彼女」の顔が少し赤く見えたのは、お酒を飲んでいたからなのかと、僕は思った。

少し飲み足りなくはないだろうか。僕にはそのように見えた。

 

「これから居酒屋に行こうと思うんだけど、一緒に行かない?」

僕が聞くと、「彼女」は少し悩んだように見えた。

 

「ホテル近くなんでしょ?僕は、終電あるけど、むらさき(「彼女」の仮名)は帰れるんだから大丈夫だよ!」

僕がそういうと、「彼女」は「分かった」とついてきてくれた。

 

 

居酒屋では、他愛のない話をしていた。

僕自身、好みのタイプの女性という事もあり、純粋にこの空間を楽しんだ。

 

「彼女」も楽しそうにしてくれた。

今日の出来事や、明日の予定、自分の仕事について。

軽いボディタッチも出来るようになった。

 

 

「彼氏はどんな人なの?」

僕は、お決まりの質問で彼氏の有無を確認した後、彼女に質問した。

 

彼女は、「淡白な人」と、複雑そうな顔で話し出した。

僕は、「彼女」の話に共感しつつ、否定し続けた。

なんとなくではあるが、彼女が言ってほしいことが、分かったからだ。

 

 

「カラオケ行こうよ」

僕は、そう言って「彼女」を誘った。

「むらさきはいろいろ溜まってるみたいだし、ストレス発散にさ!それに、むらさきは歌うの好きなんでしょ?むらさきの歌聞いてみたいな。」

 

「彼女」は「いいよ」と答えてくれた。

 

 

カラオケでは、「彼女」の歌ってほしい歌を歌った。

そして、「彼女」にも歌ってもらった。

「彼女」が喜んでくれたのは、とても嬉しかった。

 

一通り歌った後、彼女の近くに座った。

僕は、「今日は一緒にいてくれてありがとう」と言った。

「彼女」は、それに答えるように「私こそ、ありがとう」と返してくれた。

 

 

そこから、キスをした。

 

 

「付き合う前にキスしたことなったんだよね?」

僕がイタズラに聞いた。

「大河だからだよ。本当にこんなこと初めてなんだから」

「彼女」は、ハニカミながら、そう答えた。

「今日は、初めてのこと、沢山だ。」

 

 

「行きたいところがある。もう出よっか」

僕は彼女の手を引いた。

「うん」

と彼女は、立上る。

 

 

外は、相変わらず寒かった。

 

 

入るときは、繋いでいなかった手を引いて、僕達は歩みを進めた。

 

 

 

これで終わり。

神様は気まぐれのようで、この後いろいろと試練を与えてくれました。

それでも最後、女神様は微笑んでくれましたが。

 

それも伴い、僕にとっては思い出深い一夜となりました。

 

 

おわり