ナンパオトコは猛虎の夢を見るか?

尊大な羞恥心と臆病な自尊心。人喰い虎と成り果てた男の物語。果たして、人に戻れるのでしょうか。

ロシア女子とキスをした①

いつからだろうか。

海外の女性に思いを馳せるようになったのは。

映画を見たからなのか。

写真を見たからなのか。

 

きっかけはもう覚えていない。

だけど、日本人にはない美しさを持つ彼女たちに、僕は大きな憧れを覚えた。

 

いつか、こんなきれいな女性とお付き合いしたいな。

手をつなぎたいな。

キスをしてみたいな。

 

いつか・・・

いつか・・・

 

そして、その想いは大人になっても、変わらなかった。

 

 

 

 

某日

 

 

僕のスマホがメッセージの到着を知らせた。

 

 

「こんばんは。日本に到着したよ。」

 

メッセージの送り主は、ロシア人女性の友人だった。

 

「ようこそ、日本へ。」

 

僕はそう返信した。

 

 

 

 

彼女と知り合うきっかけは、SNSだった。

ロシア人を中心としたコミュニティ。

ロシア語を学び始めた僕には、会話を練習するきっかけが必要だった。

 

まったく馴染みの無いキリル文字が並んでいるロシア語は、まずは文字を覚えるところから始まる。

これがなかなか覚えられない。

 

なぜなら、普段触れることが少ないからだ。

 

英語なら、中学校、早い人は小学校以前から触れる機会がある。

だから、「Hello」や「Good」等の簡単な単語なら、日常生活で使うことは大いにある。

 

英語でさえ挫折してしまうのだから、ロシア語のハードルなんて、きっと雲の上くらい高いところにあるはずだ。

 

 

でも、何故か今回は続いている。

今回こそはやってやるんだ。

そう、意気込んていた。

 

 

 

 

 

「たいがさん、日本を案内してください。」

 

 

彼女と会う約束は、とんとん拍子に進んだ。

いつ、どこで会うかを決め、あとは僕が案内をする。

 

そんな約束をした。

 

日本にやってきたばかりの彼女をエスコートするために、僕は何をしようかと考えた。

どうすれば彼女が楽しんでくれるのか。

 

あらかじめ彼女が日本の何に対し興味があるかを考慮し、最高のデートプランを考えた。

 

 

まずはあそこに行って、次はここに行って・・・

彼女の喜ぶ顔を想像しながら、工程を組んでいった。

 

毎日、予定を組んで崩し。

組んでは崩し。

 

 

 

そして、当日を迎えることになる。

 

 

 

 

 

一つ不安なことがあった。

 

僕は、ほとんどロシア語を話すことが出来ないのだ。

いつもテキストのやり取りのみで過ごしていて、いざ会話となるとサッパリしゃべれない。

まだ、英語の方がしゃべれるくらいだ。

 

彼女との待ち合わせまで、あと少し。

今日使いたいロシア語をまとめたロシア語ノートを広げ、復習をする。

まるで試験前の学生だ。

 

テストでもないのに、試験前の緊張感を味わってる。

本当の試験でも、そんなに緊張しなかったのに。

おかしいね。

 

 

ロシア人とはいえ、女の子は女の子。

いつものようにやっていけばいい。

ただ自然に、堂々とふるまう。

 

今日はそれだけを意識して、やっていくことを決めた。

 

 

スマホに着信がある。

彼女からだ。

 

「たいがさん、着きました。今どこにいますか?」

 

 

僕は、今いる場所を告げる。

 

 

 

さあ、デートの始まりだ。

 

 

 

 

つづく