ナンパオトコは猛虎の夢を見るか?

尊大な羞恥心と臆病な自尊心。人喰い虎と成り果てた男の物語。果たして、人に戻れるのでしょうか。

僕はナンパができない

僕はナンパが出来ない。
そう思うことがあったので、ここに残そう。
 
昨日のこと。
僕は街に出た。
 
少し自分だけの時間ができたからだ。
 
風が気持ちいい。
月が綺麗だ。
 
こんな日は、素敵な出会いがある。
そんな予感がした。
 
僕は、期待に胸を膨らます。
決して、股間ではない。
 
素敵な出会いがあれば、それでいいから。
 
 
さて、街に出た。
GWが終わるのを惜しんでか、街は活気にあふれている。
楽しそうにしている人がたくさんだ。
 
楽しそうな人は、複数でいる。
カップル、男グループ、女グループ、男女グループ。
みんな思い思いに楽しんでいる。
 
僕は、一人でいる子に声をかけたかった。
街に取り残され、寂しい思いをしている。
 
だから、僕にも振り向いてくれると思った。
 
 
いた。
 
僕は茶髪の女性を追い越した。
振り向きざまに声をかける。
 
彼女は、驚きつつも、僕に答えてくれた。
 
話はあまり弾まず。
 
僕は彼女にお礼を言って、その場を立ち去った。
 
 
久しぶりのナンパだ。
気楽に行こう。
 
 
その後も何人かに、声をかけた。
皆、楽しそうに話をしてくれる。
 
でも、僕は何もせずに立ち去った。
 
何かが違って感じたからだ。
 
 
そろそろ街に出て1時間ほど経とうとした時。
僕は、一人の女性とすれ違った。
 
メガネがよく似合う、色白の女性。
透き通る肌に、厚ぼったい唇。
 
僕は思わず目を奪われてしまった。
 
 
思わず引き返す。
 
 
「すいません」
 
彼女を追い越し、振り向きざまに声をかけた。
 
「はい!?」
 
彼女は驚いたように、返事をしてくれた。
 
 
「実はこれから飲み会なんですけど・・・」
 
と身の上話をした上で、彼女を立ち止めした。
 
 
近くで見るほど美しい。
近くで見ても美しいとは、本当の美人だ。
 
 
僕は、彼女の美しさに飲み込まれないように、
冷静に会話をしていた。
 
 
「あと30分くらいなんですが、一緒に飲みませんか?」
 
「はい、いいですよ」
 
 
と、連れ出し打診が成功した。
 
 
でも、僕は思いとどまった。
 
 
なんとも言えぬ不安に襲われてしまったから。
 
 
こんな美人を連れ出せるのか?
 
何か、見落としていないか?
 
 
そう、一瞬で頭の中を不安が巡ったのだ。
 
 
 
「あ、ごめん。友達から連絡が来たみたい。」
 
「あ・・・そうなんですね」
 
 
僕は、彼女の瞳を見て、少し寂しさを感じているような気がした。
 
 
 
今思えば、そういうラッキーもあるのかもしれない。
 
クラスタの話を聞くと、芸能人と知り合ったという人もいるくらいだから。
 
でも、あの時は冷静ではいられなかった。
 
 
まるで、自分のタイプが具現化されたかのような美しさだったからだ。
 
 
 
もっと、腕を磨き、自信をつける。
 
そうすることで、今回と同じ過ちを犯すことはないだろう。
 
 
僕はナンパができない。
 
 
そう思った、一夜でした。
 
 
 
おわり