ナンパオトコは猛虎の夢を見るか?

尊大な羞恥心と臆病な自尊心。人喰い虎と成り果てた男の物語。果たして、人に戻れるのでしょうか。

re:ゼロから始める異世界生活は人生の縮図であった件

主観と客観では見えるものが大きく違ってくるのは当然だ。誰だってそんなことは分かっているのである。
しかしながら人間関係になると見えなくなることが多くなってしまう。
自分がされて嫌なことを他人にしないだけで嫌われる可能性は少なくなるというのに、なかなか難しいのである。


re:ゼロから始める異世界生活」というアニメを観ています。
異世界に突如迷い込んでしまった主人公が、ピンチを救ってくれたヒロインに惚れてしまう。惚れたヒロインを助けるために奮闘するがなかなか上手くいかず、運悪く死亡する。気が付くと転生してきた場所に戻っていた。何度か繰り替えすうちに自分が「死に戻り」をしていることに気付き、このシステムを利用しヒロインを救おうとする。しかし運命か宿命か、主人公が進む先には過酷な道しかなかった。
といったいわゆる「異世界転生」ものである。

僕の知っている異世界転生ものといえば、「転生したらスライムだった件」や「賢者の孫」といった作品で、とにかく主人公が強い。
普通の人間だった主人公が異世界転生しただけで、世界征服できちゃいそうなスーパーチートな能力を手に入れてしまうのがお決まりのパターンだった。
あとイケメン。

こういうキャラクターが主人公になると、何も不安になることがなくて、物語にスリルがない。何か問題が発生したとしても主人公の能力でどうにでもなっちゃうから。
全知全能の神がいたとしたらこんな気持ちなのかと思う。現実世界でそんなことができれば最高だ。自分好みのハーレム作り放題である。

re:ゼロから始める異世界生活」の主人公はナツキ・スバルというキャラクター。好きな人はヒロインのエミリアである。
特技は死に戻り。死ぬことで記憶を持ったまま死ぬ前の世界に戻ることができるから、行動を変えることで死の運命を変えることができる。
僕は死んだことがないし、もしかしたら死に戻りの能力を持っているかもしれないけど、死ぬとか恐ろしすぎる。未来を変えるために高層ビルから飛び降りるんだなんて、足はすくむし、直前に諦めちゃうと思う。
作中でも、スバルは特大の恐怖や痛みを乗り越えながら死に戻りを行っている。
自分のためだけなら何とかなるけど、周りの人のことを想ってやり直すこともあった。

スバルはお調子者だけどいい奴で、頑張ってほしいなと心から応援していた。

しかしながら作品の途中で事件が発生する。
スバルとエミリアの間で衝突してしまうのだ。
理由はスバルがエミリアとの約束を反故にしたから。
ここまでの話の流れで、スバルはもちろんのこと、エミリアも好意を持っているはずだった。
お互いが好意を寄せているはずだと思ったのに、スバルの自分勝手な行動に嫌気がさしたのか、エミリアからの決別を告げられてしまうのである。

 

そのシーンを見ていて、僕は腹の中にドロドロと濁ったものが渦巻いている感覚に襲われた。ムカムカとした胸やけのような感覚に吐き気を催すような不快感。

このシーンはとても重要なポイントだと思っていて、この衝突がなければスバルの行く先をよくするためのショック療法のようなものになるから。

いままでスバルがやってきたことは、はたから見れば好きな人達を守るために自己犠牲もいとわず奮闘してきていた。

しかし、その行為は好きな人から好かれたいという下心があったから。

エミリアに対する「俺のおかげでうまくいって来たんだろうが!」という感情の爆発させていた。

もし、ここでエミリアが折れてスバルの発言を許していたらどうなるのか。

近づきたいスバルと、距離を置きたいエミリアがまるで反発しあう磁石のように、永遠に距離が詰まることがなかっただろうなと。

仮にスバルが死に戻りをしていたところで、スバル自身の気持ちは変わらずに永遠に死に戻りを続けることになってしまう。

それこそバッドエンドまっしぐらであるし、スバルの何がダメなのかわからずじまいだっただろう。

何回も何回も怖い思いをして、苦しい思いをして、ここまで来て好きな人から拒絶をされてしまってはそりゃあ怒りたくもなりますわ。

感情で相手の感情をねじ伏せたくもなりますわな。

でも、無理やり感情を押し付けて相手の心を変えようとしても、心ばかりは変えられないんですわ。

 

例えば、美しい女性に貢ぎ続けている男性がいて、それでその女性の心が揺らぐかといえば・・・そんなことはなくて。

でも貢ぎ続けた男性は、好きにならなかった女性に恨みをもつよな・・・きっと。

普通誰かに何かをするときって、何かしら見返りを求めるのが当然なんですよね。

このパターンは、取るか取られるかの関係性が明確で、男性には頑張ってもらうしかなく、ダメなら次に行きましょうという感情が生まれるわけですが。ついてなかったねと。

騙した女は悪いけど、思い通りにいかなくて恨みを持つのは違うと思う。

 

スバルとエミリアの関係性は、食うか食われるか、取るか取られるかというものではないことを願いたい。

スバルがエミリアに惚れたのは、自己犠牲を厭わない優しさを与えられたからであった。

まったくの初対面であったスバルに対し、施しを与える優しさを持つエミリアが、ここまで信頼関係を気付いてきた(はず)のスバルを利用しようと思っているはずがない。

そもそもスバルに対し拒絶をしたのも、スバルの下心を見透かした上での行動であり、今回の経験からスバルがいい方向に転換していってほしいと思う。

ハッピーエンドであってくれ。

 

 

おわり